TOKAI TURNING POINT

Number理美容経営者のターニングポイントを知り、学ぶ。

合同会社SUN-ZEN.LLC小野 功

Isao Ono

1977年6月30日、愛知県豊橋市生まれ。実家は飲食店を自営、物心ついたときからお店を手伝い、高校生で店長相当の立場にて商売を経験。大学生になる頃に兄が家業を継承し自身も経営に携わる。大学卒業後、飲食店を全国展開する大手企業に就職。32歳でラーメン屋を開業し独立。その後、知人の依頼で経営に行き詰まったヘアサロンを立て直すべく、2018年3月6日『合同会社SUN-ZEN.LLC』を設立し41歳で美容業界に参画。現在はヘアサロン『LUCIDO STYLE B-SHINE』として経営を黒字化させ運営、来年に会社を承継予定。

異業種ビジネス最前線から見る、美容業界が迎えるべき『ターニングポイント』

飲食店経営から40歳で美容業界に参画、『特殊な経営者』と呼ばれる理由

愛知県豊橋市にて実家はファーストフード店を自営、物心ついたときから店を手伝い、高校生で店長相当の立場にて商売を経験。大学生になる頃に父親が引退し、兄が店を継いだことで自身もイチからお店を作り上げる経営に携わる。大学卒業後は飲食店を全国展開する大手企業に就職、32歳でラーメン屋を開業し独立。38歳には、株式投資や副業を含めて億を超える資産を形成。コンサルタント業やファイナンシャルプランナーとしての要素も併せ持った“特殊な経営者”としての手腕が評判となり、知人の依頼で経営に行き詰まったヘアサロンを立て直すべく、2018年3月『合同会社SUN-ZEN.LLC』を設立し、40歳で美容業界に参画した。現在はヘアサロン『LUCIDO STYLE B-SHINE』として経営を黒字化させ運営中。
「財務や税務、株式投資をはじめとしたファイナンシャル業務から、人材育成、SNSのセミナーなどコンサルタント業務に至るまでおおむね得意です。世界経済の動向を常に追っているため、経営についての悩みはありません。税金の仕組みをちゃんと勉強し、最小限に抑えれば資金繰りには困らないですね」

Isao Ono

スタッフ全員が異例の『個人事業主』

運営していたラーメン屋の客として訪れていた現サロンのマネージャーの依頼によって、ヘアサロンのオーナーに転身。元来、組織に属することが苦手であった小野代表だがスタッフの今後を考えてSPCに入会。
「まずは美容室経営の問題点を会議で洗い出し、年間通して営業利益が30%出せる状態にしました。東海地方の売上集計で、利益率は100店舗中1位。面貸しサロンだとすべて1人でこなすのは大変ですが、プロ野球チームみたいにみんなで協力し合って、効率よく利益を分配できるよう、受付も含めてスタッフ全員が個人事業主という形態をとっています。インボイス制度対策をしたうえで、給料は50〜70万円以上、退職金は3〜4千万円は用意できるようになりました。元ラーメン屋が突然オーナーになったのですが、スタッフはほぼ全員残ってくれましたね」
祖父は市会議員、祖母は教頭で母も先生だったという小野代表。古風な価値観を受けて育ったものの、経営者としてもっとも大事なのは“今の時代に合っているかどうか”だと話す。
「弊社では育休制度も完備し、週3日休むことも許可しています。予約がなければ帰ることもできるし、練習もほぼありません。フランチャイズのノウハウを持っているので多店舗展開もできますが、そこに価値基準を置いていないため必要性を感じませんね。年商が20億円あっても私にとっては意味はないんです」
やりきってしまったらそこでゴールがきて終わってしまう。“お金”ではない本質的な幸せのためにビジネスを続けているという。

LUCIDO STYLE B-SHINE

UGCを最大活用。何もせずに自動で集客を呼ぶ仕組み

集客のために活用したのはSNSのUGC(企業ではなく、一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツ)だ。そのためのブランディングとハッシュタグを合わせた投稿を工夫し集客を獲得。さらに来店した客がサロンの情報を投稿拡散することにより、客によって自動的にUGCが形成されていく仕組みをつくった。
「ラーメン屋のときから、口コミを増やしグルメサイト1位を取ることで集客を増やしてきましたが、ヘアサロンも同じです。たとえば動物園に行けばみんな写真を撮りますよね、サロンも自由に撮影・投稿可能にすれば、何もしなくてもお客様がどんどん拡散し宣伝してくれる。まだどこもしていないこの仕組みを活用すれば、美容業界で日本一のUGCがつくれますよ。SPCでは、こういった仕組を考えて提案するというセミナーも開催しています」
SNSはただ投稿するだけでなく、戦略的に活用する。“仕事”とは、開店から閉店まで店にいることではない。美容師は客に喜んでもらうこと、管理職なら生産性を上げることだと語る小野代表。現在は、実労働時間を最小限にし、売上を増やし続ける仕組みをつくることに力を入れ投資を続ける。異業種から見る鋭い視点と、これまにない切り口で業界に一石を投じ、その類稀なる商才でビジネスの最前線を走り続けている。

欠点は『生産性』の低さ。今後の美容業界が迎えるターニングポイントとは

異業種の事業を展開する小野代表の視点が捉える美容業界の欠点は“生産性の低さ”にある。唯一のイノベーションは『1000円カット』でシステムを効率化し時間生産性を高めたことで株式上場、世界進出した企業だけだという。
「人を育てることに時間をかけるより、システムで生産性を上げる。弊社では現在、それを最適化させる取り組みを行っています。たとえば、みんなが入っている警備会社のセキュリティも警報が鳴って警察が来て賠償金を払うだけなので無駄だと思うんです。経営における生産性の向上は“やることとやらないことを決める”ことが重要です」
ビジネスの最先端を知る小野代表は、美容業界に残る古い風習を見直し、今の時代に合ったかたちに作り直す必要がある点を指摘。
「もっとも効率良く生産性を上げることが大事です。対戦ゲームでも好きだからって勝てるわけじゃない。効率や手法を模索し、手の内を読む。心理がわかればスタッフの行動理由が手にとるようにわかるようになります。業界の一番の課題は“人が辞めること”ですよね、それなら辞めさせない仕組みをつくればいいんです」
離職するスタッフが人間関係や待遇に不満を持っているというのは言い訳で、実際は“つまらないから”であると分析。
「不満の本質は“つまらない”という不安にあります。次に起こりうる問題を予測し先手を打つことが大事です。個人によって、休暇を与える、給与を上げる、など柔軟に対応しながら、iDeCoなどの節税制度を利用して退職金を3千万円以上用意し、不安を取り除いてあげれば離職率は下げることができます」

店販は売らない。教育もしない。新しい価値を創造する

今やスマホひとつで何でも手に入る時代。シャンプーなど美容商品もインターネットで安く購入できることを客も知っているとなれば、わざわざ店販を売る必要はない。美容師なら技術を売るべきだ、と話す。
「弊社では、スタッフ1人ひとりに合わせてブランディングを行っています。たとえば、40代のママさん美容師に“髪質改善が得意な美容師”というブランディングをし、集客をします。1日2.3人で客単価は約2万円、県外から呼ばれるほど活躍して50代でも活躍できる美容師になりましょう、というふうに目標設定をしていきます。私自身もスタッフが安心できるように一緒に勉強をしますが、その過程で“教育”をすることはありません。教えに従わせることは個人の成長の幅を狭めてしまうため、経費は100万でも200万でも使ってOKで好きなようにさせます。そこで失敗して、何が原因か解決するにはどうすべきかを自分で考え学んでいく。育成とはすべてその応用です。だからスタッフは自由な発想で長く活躍することが可能です」
みんなで協力し合い、客のために結果をつくり上げるプロ野球チームのような個人事業主サロンを目指す『(同)SUN-ZEN.LLC』。会社の後継者はすでに2名を選定。早々にやるべき投資は終え、あとは結果を生み出すのを待つだけの状態まで将来設計を構築している。

『なぜ働くのか』自分にとっての『幸せ』を再考するとき

「“なぜ自分は仕事をするのか”を考えると、生活のためやお金持ちになるためなど様々な価値観がありますが、突き詰めると何が自分にとっての“幸せ”かという根本を見直す必要があると思います。会議に時間を割くよりも、家族と一緒に夕飯を食べたい。お客様がいて働くお店があることが幸せで、それ以上を求めてもキリがないんです。だから、求人募集もしないし多店舗展開も考えていません。将来が不安なスタッフに退職金を用意してあげて、自分の人生を自分の足で歩いてもらいたい。個々人が本質的な“幸せ”を生きられるよう協力し合いながら、全員が向上していけるサロンを目指しています」
お子さんと過ごす時間を何よりも大切にしているという小野代表。無駄な労働をなくし、効率的に生産性を上げるシステムの普及こそが今後の業界には必要なのかもしれない。

合同会社SUN-ZEN.LLC

INTERVIEW DATA

会社名
合同会社SUN-ZEN.LLC
代表
小野 功
創業
2018年3月6日
スタッフ数
11名
本社所在地
〒441-8106 愛知県豊橋市弥生町字松原49番地2
取材店舗名
LUCIDO STYLE B-SHINE
店舗所在地
〒441-8106 愛知県豊橋市弥生町字松原49番地2
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